ひとくち天災 — 強くするな。うまくしてくれ。

KEY VISUAL / 月夜の食卓

ORIGINAL STORY PROJECT

月の砂粒は見えるのに、
目の前の醤油が、見つからない。

世界を救える少年と、彼を弱くする料理人。
ふつうの「いただきます」を、もう一度。

01 STORY

最強になる話、じゃない。

ただ、君と
ごはんが食べたい。

食べ物の作用が、何万倍にもなる少年・天野透
ブルーベリーで月面を見渡し、
コーヒー一杯で、返事を待つ時間が果てしなくなる。

すごい。でも、不便。
誰かを救えても、同じ食卓には戻れない。

そんな彼に、料理人を目指す橘ひよりが宣言する。

「私、あんたを
 弱くする料理人になる。」

目指すのは、伝説のフルコースじゃない。
彼が安心して、おかわりできる一皿だ。

01 / BODY

食べるほど、強すぎる。

伸びるのは、食べ物に結びつく一部の機能だけ。身体全体が都合よく強くなるわけじゃない。

02 / COOKING

料理するほど、人に戻る。

ひよりの目標は、異能の作用を抑えて、おいしさを残すこと。失敗だって、ふたりの大事な一食。

03 / WISH

最後は、同じ食卓へ。

救うために強くなり、誰かの手を取るために弱くなる。今日の献立が、ふたりの明日を変えていく。

02 ONE-BITE LAB

透の体質、ちょっと体験。

さて、何をひとくち?

食べ物を選んでみて。
「便利」の先には、たいてい事件がある。

OBSERVATION 01作用、過剰。

見えるのは、
月の砂粒。

視界は一気に月面へ。でも、目の前の食卓にはピントが合わない。

「……醤油、どこ?」

月を映す透の瞳FOCUS : MOON
異能出力 演出イメージOVER LIMIT

※食品の作用や料理による調整は、作品独自の超常設定です。現実の食品の効能を示すものではありません。

03 CHARACTERS

ひとりじゃ、いただけない。

この食卓の、いつもの顔。

困った体質も。言えない願いも。
隣に座れば、きっと少し変わる。

青い瞳と黒髪の天野透01

最強なのに、昼ごはんが難しい。

食べると、天災。

天野 透

あまの とおる / TORU AMANO

「強くするな。
うまくしてくれ。」

食べ物の作用が何万倍にもなる特異体質の高校生。食べることが好きなのに、普通の食事ができない。ほしいのは最強の称号ではなく、みんなと同じ一人前。

いまの願い
同じメニューを頼んで、「おかわり」と言うこと。
04 WEB NOVEL

小説から、ひとくちずつ。

「月の石まで見える」
「じゃあ、醤油取って」

最強と、料理人。
はじまりは、そんな放課後だった。

01WEB先行プロローグ / 無料 / 約5分月より遠い、醤油差し。書き下ろし・制作中の先行版

※このサイト用に書き下ろした先行プロローグです。本編制作にあわせて改稿する場合があります。

05 SPECIAL

気になったら、ひとくちおすそ分け。

この物語を、持ち帰ろう。

お気に入りの一言も、一枚も。
あなたの食卓の話題になりますように。

CONCEPT DESIGN

キャラクター&世界観ボード

この物語をつくる、最初の一枚。

世界より先に、
君の「おいしい」を救いたい。

ふたりのはじまりを読む
ひとくち実験 小説を読む

ふつうの「いただきます」を、もう一度。

ひとくち天災

WEB NOVEL / PROLOGUE 01

WEB先行版・書き下ろし

月より遠い、
醤油差し。

ひとくち天災 約5分

月の石まで見える。

そう言った天野透に、橘ひよりが最初に返した言葉は「すごい」ではなかった。

「じゃあ、そこの醤油取って」

九月の放課後。調理室には、焼きたての卵焼きの匂いが残っていた。窓の外にはまだ青い空があって、その端に、薄い月が浮かんでいる。

透には、その月に転がっている石が見えていた。

欠けた縁。細い影。石の下に入り込んだ、さらに小さな砂。
そこまで見えるのに、机の上は、輪郭のない色のかたまりだった。

「……どこ?」
「目の前」
「目の前が、いちばん見えない」

ひよりが黙った。
信じてもらえなかったのだろう、と透は思った。いつものことだった。

けれど、次に触れたのは、冷たい醤油差しの側面だった。彼女が、透の右手まで運んできたのだ。

「持てる?」
「うん」
「じゃ、それ。二センチ右」

透は言われたとおりに動かした。

「ありがとう」

そんな簡単なことで礼を言われたのが、少し久しぶりだった。

白い皿の上には、ブルーベリーがもう一粒残っていた。

ひよりが作った試作デザートの材料だ。透は、料理研究部に入ったばかりの彼女に、試食を頼まれた。断り方を探すより先に、皿の上の小さな青を見てしまった。

たった一粒なら。

何度も後悔して、そのたびに、また使ってしまう言葉だった。

「なんで先に言わないの」

ひよりの声は、怒っていた。

「言うと、食べさせてもらえなくなるから」

口にしてから、子どもみたいな言い訳だと思った。
それでも、ほかに説明のしようがなかった。

天野透の体は、食べ物に大げさすぎる返事をする。

目に関わる作用なら、目だけが。熱に関わる作用なら、熱だけが。
人の何万倍も先へ行くくせに、残りの体は置いていく。

コーヒーを飲んだ日は、友達が「おはよう」と言い終わるまでが、ひどく長かった。
頭の中ではいくらでも返事ができた。口は、一度しか動かなかった。

便利だね、と言われる。
役に立つね、と言われる。

そのあとに誘われるのは、だいたい、食事ではなかった。

「いつも、何食べてるの」

透は鞄の中を探った。指で縫い目を確かめて、決まったポケットから、銀色の小さな袋を取り出した。
何度も検査と調整を繰り返して、ようやく食べられるようになったものだ。

ひよりが袋を受け取った。
カサ、と薄い音がした。

「味は?」
「安全」
「それ、味じゃない」

知っている。
透は、笑うつもりで息を吐いた。

ひよりは、しばらく何も言わなかった。
包丁を片づける音。水道の音。皿が重なる音。

デザートは、下げられたのだと思った。

ああ、終わった。
これで彼女も、透の前には料理を出さなくなる。

「手、出して」

言われて差し出すと、指の間に、一本のスプーンが収まった。

「何?」
「まだ何も。持つだけ」

その声が、さっきより近かった。
ひよりは隣の椅子に座っていた。

「今日ここで、適当に混ぜて食べさせたりしないから」

透の肩から、少し力が抜けた。

「まず、聞く。食べられたもの。食べられなかったもの。どれくらいで戻ったか。嫌だったこと。全部」
「……面倒だよ」
「料理って、わりと面倒なものだよ」

紙をめくる音がした。

「卵焼き一個だってさ、甘いのが好きな人と、しょっぱいのが好きな人がいる。冷めてから食べるなら、また変える。そういうのを考えるのが、作るってことでしょ」

透は、スプーンの柄を親指でなぞった。

彼女が言っているのは、透の体を治すという話ではなかった。
透に合わせて、料理を変えるという話だった。

「俺だけ、手間が何万倍もかかる」
「そこまで律儀に体質そろえなくていいから」

思わず、笑った。

ひよりも笑った。たぶん。
月の砂ばかり見えて、その顔はまだわからなかった。

「じゃあ、最初の質問」

ペンの先が、紙を軽く叩いた。

「何が食べたい?」

透は答えられなかった。

何を食べるとどうなるかなら、答えられる。
何を食べてはいけないかなら、もっと詳しく答えられる。

でも、その質問には、しばらく答えていなかった。

「……同じのがいい」
「何と?」
「みんなと」

声にした瞬間、ずいぶん小さな願いに聞こえた。

同じ皿。同じ量。同じメニュー。
昼休みが終わる前に食べ終えて、うまかったとか、ちょっと熱かったとか言いながら、教室に戻る。

月なんか、見えなくていい。

「あ、でも」

慌てて付け足した。

「おいしいほうがいい」

ひよりは、今度ははっきりと笑った。

「そこは任せてよ」

窓の外が、少しずつ夕方になっていた。

月面の石が、遠ざかりはじめた。輪郭がほどけて、代わりに、窓枠の線が戻ってくる。
透の視界は、ようやく、この調理室に帰ってきた。

ひよりのノートが見えた。

いちばん上に、大きな文字があった。

『天野透が、普通におかわりできる料理』

その下は、まだ真っ白だった。
レシピも、答えも、一行も書かれていなかった。

なのに透は、今日初めて、ちゃんと腹が減った気がした。

「決めた」

ひよりが、ペンを置いた。

「私、あんたを弱くする料理人になる」

ヒーローになれ、と言った人はいた。
もっと強くなれる、と言った人もいた。

弱くなっていいと、言われたのは初めてだった。

「……注文、つけてもいい?」
「どうぞ」

透はスプーンを置いた。
目の前にいる人の顔を、今度は、ちゃんと見た。

「強くするな。うまくしてくれ」

ひよりは、空の皿を引き寄せた。

「はい。承りました」

PROLOGUE / END

ふたりの献立は、
まだ白紙。

本編へつながる、最初のひとくち。
この先行版は、制作の進行にあわせて更新する場合があります。

このサイトについて

企画・制作

株式会社GATO JAPAN

作品と権利の表記

本作品はフィクションです。登場する人物・団体・AIは実在のものとは関係ありません。
© GATO JAPAN. ALL RIGHTS RESERVED.

作品の制作状況

『ひとくち天災』は、小説・WEB・SNSでの展開から育てていくオリジナル作品です。掲載内容は企画開発中の案で、アニメ化・キャスト・発売日が決定したことを示すものではありません。

掲載ビジュアルと小説

ビジュアルはAI生成のコンセプトアートを元に構成しています。アニメーション制作に使用する際には、清書・設定統一などの工程を想定しています。小説は本サイト用の書き下ろし先行版です。

作品内の食品表現

食品の作用や調理による異能の調整はフィクションです。現実の医学的・栄養学的な効果や、食べ方の推奨ではありません。

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