ひとくち天災 — 強くするな。うまくしてくれ。

KEY VISUAL / 月夜の食卓

A LITTLE BITE, A BIGGER WORLD.

月の砂粒は見えるのに、
目の前の醤油が、
見つからない。

世界を救える少年と、彼を弱くする料理人。
ふつうの「いただきます」を、もう一度。

プロローグを読む無料・約5分体質をのぞいてみる

企画・制作 株式会社GATO JAPAN

01Story物語

最強になる話、じゃない。

ただ、君と
ごはんが
食べたい。

食べ物の作用が、何万倍にもなる少年・天野透
ブルーベリーで月面を見渡し、
コーヒー一杯で、返事を待つ時間が果てしなくなる。

すごい。でも、不便。
誰かを救えても、同じ食卓には戻れない。

そんな彼に、料理人を目指す橘ひよりが宣言する。

「私、あんたを
 弱くする料理人になる。」

目指すのは、伝説のフルコースじゃない。
彼が安心して、おかわりできる一皿だ。

AT THE TABLE
ふたりの会話

TORU「味は、安全。」

HIYORI「それ、味じゃない。」

01 / BODY

食べるほど、強すぎる。

伸びるのは、食べ物に結びつく一部の機能だけ。身体全体が都合よく強くなるわけじゃない。

02 / COOKING

料理するほど、人に戻る。

ひよりの目標は、異能の作用を抑えて、おいしさを残すこと。失敗だって、ふたりの大事な一食。

03 / WISH

最後は、同じ食卓へ。

救うために強くなり、誰かの手を取るために弱くなる。今日の献立が、ふたりの明日を変えていく。

02One-bite labひとくち実験

透の体質、ちょっと体験。

さて、何をひとくち?

食べ物を選んでみて。
「便利」の先には、たいてい事件がある。

体質、観察中。SELECT A BITE 01—03
OBSERVATION 01作用、過剰。

見えるのは、
月の砂粒。

視界は一気に月面へ。でも、目の前の食卓にはピントが合わない。

「……醤油、どこ?」

月を映す透の瞳FOCUS : MOON
異能出力 演出イメージOVER LIMIT

※食品の作用や料理による調整は、作品独自の超常設定です。現実の食品の効能を示すものではありません。

03Characters登場人物

ひとりじゃ、いただけない。

この食卓の、いつもの顔。

困った体質も。言えない願いも。
隣に座れば、きっと少し変わる。

青い瞳と黒髪の天野透01

最強なのに、昼ごはんが難しい。

食べると、天災。

天野 透

あまの とおる / TORU AMANO

「強くするな。
うまくしてくれ。」

食べ物の作用が何万倍にもなる特異体質の高校生。食べることが好きなのに、普通の食事ができない。ほしいのは最強の称号ではなく、みんなと同じ一人前。

いまの願い
同じメニューを頼んで、「おかわり」と言うこと。

誰と、食卓を囲もう。MEET YOUR TABLEMATES

01/06
04Novel小説

小説から、ひとくちずつ。

「月の石まで見える」
「じゃあ、醤油取って」

最強と、料理人。
はじまりは、そんな放課後だった。

01WEB先行プロローグ / 無料 / 約5分月より遠い、醤油差し。書き下ろし・制作中の先行版

※このサイト用に書き下ろした先行プロローグです。本編制作にあわせて改稿する場合があります。

05Specialスペシャル

気になったら、ひとくちおすそ分け。

この物語を、持ち帰ろう。

お気に入りの一言も、一枚も。
あなたの食卓の話題になりますように。

CONCEPT DESIGN

キャラクター&世界観ボード

この物語をつくる、最初の一枚。

世界より先に、
君の「おいしい」を救いたい。

ふたりのはじまりを読む
ひとくち実験 小説を読む

ふつうの「いただきます」を、もう一度。

ひとくち天災

WEB NOVEL / PROLOGUE 01

WEB先行版・書き下ろし

月より遠い、
醤油差し。

ひとくち天災 約5分

月の石まで見える。

そう言った天野透に、橘ひよりが最初に返した言葉は「すごい」ではなかった。

「じゃあ、そこの醤油取って」

九月の放課後。調理室には、焼きたての卵焼きの匂いが残っていた。窓の外にはまだ青い空があって、その端に、薄い月が浮かんでいる。

透には、その月に転がっている石が見えていた。

欠けた縁。細い影。石の下に入り込んだ、さらに小さな砂。
そこまで見えるのに、机の上は、輪郭のない色のかたまりだった。

「……どこ?」
「目の前」
「目の前が、いちばん見えない」

ひよりが黙った。
信じてもらえなかったのだろう、と透は思った。いつものことだった。

けれど、次に触れたのは、冷たい醤油差しの側面だった。彼女が、透の右手まで運んできたのだ。

「持てる?」
「うん」
「じゃ、それ。二センチ右」

透は言われたとおりに動かした。

「ありがとう」

そんな簡単なことで礼を言われたのが、少し久しぶりだった。

白い皿の上には、ブルーベリーがもう一粒残っていた。

ひよりが作った試作デザートの材料だ。透は、料理研究部に入ったばかりの彼女に、試食を頼まれた。断り方を探すより先に、皿の上の小さな青を見てしまった。

たった一粒なら。

何度も後悔して、そのたびに、また使ってしまう言葉だった。

「なんで先に言わないの」

ひよりの声は、怒っていた。

「言うと、食べさせてもらえなくなるから」

口にしてから、子どもみたいな言い訳だと思った。
それでも、ほかに説明のしようがなかった。

天野透の体は、食べ物に大げさすぎる返事をする。

目に関わる作用なら、目だけが。熱に関わる作用なら、熱だけが。
人の何万倍も先へ行くくせに、残りの体は置いていく。

コーヒーを飲んだ日は、友達が「おはよう」と言い終わるまでが、ひどく長かった。
頭の中ではいくらでも返事ができた。口は、一度しか動かなかった。

便利だね、と言われる。
役に立つね、と言われる。

そのあとに誘われるのは、だいたい、食事ではなかった。

「いつも、何食べてるの」

透は鞄の中を探った。指で縫い目を確かめて、決まったポケットから、銀色の小さな袋を取り出した。
何度も検査と調整を繰り返して、ようやく食べられるようになったものだ。

ひよりが袋を受け取った。
カサ、と薄い音がした。

「味は?」
「安全」
「それ、味じゃない」

知っている。
透は、笑うつもりで息を吐いた。

ひよりは、しばらく何も言わなかった。
包丁を片づける音。水道の音。皿が重なる音。

デザートは、下げられたのだと思った。

ああ、終わった。
これで彼女も、透の前には料理を出さなくなる。

「手、出して」

言われて差し出すと、指の間に、一本のスプーンが収まった。

「何?」
「まだ何も。持つだけ」

その声が、さっきより近かった。
ひよりは隣の椅子に座っていた。

「今日ここで、適当に混ぜて食べさせたりしないから」

透の肩から、少し力が抜けた。

「まず、聞く。食べられたもの。食べられなかったもの。どれくらいで戻ったか。嫌だったこと。全部」
「……面倒だよ」
「料理って、わりと面倒なものだよ」

紙をめくる音がした。

「卵焼き一個だってさ、甘いのが好きな人と、しょっぱいのが好きな人がいる。冷めてから食べるなら、また変える。そういうのを考えるのが、作るってことでしょ」

透は、スプーンの柄を親指でなぞった。

彼女が言っているのは、透の体を治すという話ではなかった。
透に合わせて、料理を変えるという話だった。

「俺だけ、手間が何万倍もかかる」
「そこまで律儀に体質そろえなくていいから」

思わず、笑った。

ひよりも笑った。たぶん。
月の砂ばかり見えて、その顔はまだわからなかった。

「じゃあ、最初の質問」

ペンの先が、紙を軽く叩いた。

「何が食べたい?」

透は答えられなかった。

何を食べるとどうなるかなら、答えられる。
何を食べてはいけないかなら、もっと詳しく答えられる。

でも、その質問には、しばらく答えていなかった。

「……同じのがいい」
「何と?」
「みんなと」

声にした瞬間、ずいぶん小さな願いに聞こえた。

同じ皿。同じ量。同じメニュー。
昼休みが終わる前に食べ終えて、うまかったとか、ちょっと熱かったとか言いながら、教室に戻る。

月なんか、見えなくていい。

「あ、でも」

慌てて付け足した。

「おいしいほうがいい」

ひよりは、今度ははっきりと笑った。

「そこは任せてよ」

窓の外が、少しずつ夕方になっていた。

月面の石が、遠ざかりはじめた。輪郭がほどけて、代わりに、窓枠の線が戻ってくる。
透の視界は、ようやく、この調理室に帰ってきた。

ひよりのノートが見えた。

いちばん上に、大きな文字があった。

『天野透が、普通におかわりできる料理』

その下は、まだ真っ白だった。
レシピも、答えも、一行も書かれていなかった。

なのに透は、今日初めて、ちゃんと腹が減った気がした。

「決めた」

ひよりが、ペンを置いた。

「私、あんたを弱くする料理人になる」

ヒーローになれ、と言った人はいた。
もっと強くなれる、と言った人もいた。

弱くなっていいと、言われたのは初めてだった。

「……注文、つけてもいい?」
「どうぞ」

透はスプーンを置いた。
目の前にいる人の顔を、今度は、ちゃんと見た。

「強くするな。うまくしてくれ」

ひよりは、空の皿を引き寄せた。

「はい。承りました」

PROLOGUE / END

ふたりの献立は、
まだ白紙。

本編へつながる、最初のひとくち。
この先行版は、制作の進行にあわせて更新する場合があります。

このサイトについて

企画・制作

株式会社GATO JAPAN

作品と権利の表記

本作品はフィクションです。登場する人物・団体・AIは実在のものとは関係ありません。
© GATO JAPAN. ALL RIGHTS RESERVED.

作品の制作状況

『ひとくち天災』は、小説・WEB・SNSでの展開から育てていくオリジナル作品です。掲載内容は企画開発中の案で、アニメ化・キャスト・発売日が決定したことを示すものではありません。

掲載ビジュアルと小説

ビジュアルはAI生成のコンセプトアートを元に構成しています。アニメーション制作に使用する際には、清書・設定統一などの工程を想定しています。小説は本サイト用の書き下ろし先行版です。

作品内の食品表現

食品の作用や調理による異能の調整はフィクションです。現実の医学的・栄養学的な効果や、食べ方の推奨ではありません。

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